28歳のある朝

28歳になったばかりの冬のことでした。

当時、私はある企業に勤めていました。

社員数100名、株式上場こそしていませんでしたが、新聞で取り上げられる
など経営は順調だと、私だけでなく、皆が思っていました。

私はいつものように朝、出社してからパソコンの電源を入れました。

先輩方も出社してきて、コーヒーメーカーもフル稼働していたという記憶が
あります。

変わったことは一つだけ。

社長が出勤してきてからの朝礼が始まらないこと。

いつもなら一秒の遅刻にもうるさい社長が、時間になっても、どこにいるかも
分からないのです。

私も顧客企業との商談の時間が迫ってきました。

「もう行こう。」

そう思い上司である課長に、一言だけ断っておこうと思ったときでした。
課長は妙な表情でこう言いました。

「あぁ、商談ね。行かなくていいんだよ、もう。」

「はい?」

「行かなくていいよ。」

その時の私は、先方からキャンセルでもあったのかと思い、電話を取ろうと
した時でした。

「勝手に電話をするんじゃない!」

と課長に大きな声で制されたのです。

何かおかしい。

いよいよ妙だと思い、理由を尋ねました。
仕事が出来ない理由を上司に聞く。
実に異様でした。

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